「ヴォルフ・ビーアマンは実質あいみょん」とかいう舐めた発表をしたら、話したことない同級生から一年越しに声をかけられた。当時の原稿が見つかったので供養【大学】

音楽

昔、講義で「ヴォルフ・ビーアマンは実質あいみょん」とかいう舐めた発表をしたんですけど、最近ある人から急に「あのときの発表をいまだに覚えている」と言われました。当時は講義なのでみんな真面目な顔して聴いてて、「うわ~これはスベリ散らかしたな~」と思っていたんですけど、そのときも講義後にほぼ話したことのなかった方から称賛の声をいただき、大変安心したのを覚えています。今回もこれまでほとんど話をしたことのない方から一年越しに言っていただいたので、やっぱり変なことをするのも悪くないな~という、変な成功体験を得てしまっています。他人の記憶に残るのは楽しい。

せっかくなので過去の資料を探してみたらまだ原稿が残っていたので、記事にして供養します。
パワポもあったはずなんですけど、見つかりませんでした。

以下発表用原稿のため口語体です。


「ヴォルフ・ビーアマンは実質あいみょん」 

まずはじめに、今回私はヴォルフ・ビーアマンというドイツの詩人について調べてきました。授業内でも「ビアマン事件」の名前があったため、名前だけ知っている人も多いんじゃないかなと思います。 

今回の発表では、3つに分けてお話しようと思ってます。 

はじめに、そもそもヴォルフ・ビーアマンって誰?ということでビーアマンについて軽く紹介をします。 

次に、「ヴォルフ・ビーアマンは実質あいみょん」であるという非常にドラスティックな主張をしたいと思います。 

そして最後に、ヴォルフ・ビーアマンの詩を聴いてみようということで実際にビーアマンの歌を聴いてもらって終わりにしようと思います。 

発表はできるだけ肩の力を抜いて聴いてもらえると非常に助かります。 

◯そもそもヴォルフ・ビーアマン(Wolf Biermann)って誰? 

ここについてはわかりやすい説明を一部引用させていただきます。 

ビーアマンは一九三六年ハンブルクに生まれ、 一九五三年、 その政治的信条から東ドイツに移ったコミュニストである。 東ベルリンのフンボルト大学で哲学と数学を学び、 二年間ブレヒトの下で演出助手を勤めた後、 労働者と学生によって一九六一年に組織された劇団に加わり、 自作のシャンソンをギターの弾き語りで歌っていた。 しかしその後、ドイツ統一 社会党(SED)から「学生たちの愛国心と国を守る気概を危くする」という批判を受け、 党から除名されると共に、 一 九六五年以来、 公けの席で歌うことを禁じられている。 彼の詩集及びレコードはほとんどすぺて西ベルリンの一出版社から出ている。 彼の作品はエロティックなテーマから平和主義的なテーマに至るまで、 また童謡からバラードに至るまで、 政治的乃至文学的シャンソンのすぺてのテーマと形式を覆っている(一橋大学助教授 諏訪功)  

次に、ビアマン事件についてです。 

1976年11月17日、西ドイツでの演奏旅行中に東ドイツ市民権を剥奪され、家族とともに西ドイツに留まりました。政府の決定当日には東ドイツの作家クリスタ・ヴォルフ、ハイナー・ミュラー、ザラ・キルシュらが抗議声明を発表、西ドイツでも抗議集会が開かれました。当時、ビーアマンの監視を担当していたシュタージ将校ウォルフガング・シュミットも、追放決定を聞いた瞬間に失策だと驚き、その通りになったと回想しています。市民権剥奪以降も東ドイツ政府に対する批判を続け、再統一前の1989年には再び東ドイツで公的活動を行ないました。 

以上でビーアマンについての簡単な紹介を終わります。 

◯「ヴォルフ・ビーアマンは実質あいみょん」 

ここからは、「ヴォルフ・ビーアマンは実質あいみょん」であるという切り口から、ヴォルフ・ビーアマンについて詳しく見ていきます。 

1.シンガーソングライターである 

これはもういわずもがなです。両者ともに歌にメッセージを乗せて聴いている人に届けるという点で共通していると言うことができます。 

2.非常に高い評価を受けている 

みなさんご存知の通り、あいみょんは日本で非常に多くに人から愛されている歌手であり、(FM Q LEAGUE AWARD 2017:年間大賞・)第61回日本レコード大賞:優秀アルバム賞・(MTV Video Music Awards Japan:最優秀アーティストビデオ賞)など数々の賞を受賞し、高い評価を受けています。 

それに対してビーアマンは1991年、ドイツ語圏で最も権威のある文学賞ゲオルク・ビュヒナー賞を受賞。1998年にはドイツ国家賞も受賞するなど、非常に高い評価を受けています。 

この点においてもビーアマンとあいみょんは共通していると言えます。 

3.メッセージ性の強い歌によって規制を受けている 

あまり知られていませんが、あいみょんはタワーレコード限定シングル『貴方解剖純愛歌 〜死ね〜』でインディーズ・デビューしました。しかし、タイトルでも分かる通り、過激な歌詞からテレビ・ラジオ各局では放送自粛となりました。 

これは、反体制的な詩によって公の場で歌うことを禁止されたビーアマンと構造が完全に一緒だといえるでしょう。 

4.ビジュアル 

あいみょんはその愛くるしいビジュアルも特徴の一つでしょう。しかし、それに対してはビーアマンも負けていません。具体的には……ええ、やや無理があるでしょうか、この点は無かったこととします。

4.作詩(作詞)および韻を踏む能力が高い 

ビーアマンの作詩および韻を踏む能力が高いことについては、◯ヴォルフ・ビーアマンの詩を聴いてみよう にて実際に体験して頂こうと思うため、割愛させていただきますが、彼の詩は非常に言葉選びが上手く、そして多くの韻が踏まれています。 

あいみょんもまた、作詞に非常に凝っていることで有名です。歌詞のいたるところで韻を踏んでいるのはもちろんのこと、『マトリョーシカ』の歌い出しを例に上げると「あいつの全てを知り尽くし 尻に敷いてしまいたいわ」と、短い一節の中にサ行が6個も盛り付けられるなど、韻以外にも作詞全般にこだわっていることが見受けられます。 

このことから、ビーアマンもあいみょんも抜きん出た作詩(作詞)能力を持っていると言うことができるでしょう。 

以上の点から、「ヴォルフ・ビーアマンは実質あいみょん」と言っても過言ではないということがわかっていただけたのではないでしょうか。 

また副次的に、このような特徴を踏まえると、ビーアマンが市民権剥奪などの厳しい処遇に身を置かれても強いメッセージを発信し続け、それが東ドイツの人々にも広く受け入れられていた理由が、あいみょんという私たちに親しみのシンガーソングライターを通して、よくわかったのではないかと思います。 

◯ヴォルフ・ビーアマンの詩を聴いてみよう 

先程、ビーアマンの作詩能力および韻を踏む能力が高いと説明をしました。 

最後に実際に、ヴォルフ・ビーアマンの詩を聴いてみたいと思います。  

Ermutigung
励まし 

Du, laß dich nicht verhärten in dieser harten Zeit. 
Die allzu hart sind, brechen, die allzu spitz sind, stechen und brechen ab sogleich. 
硬くなってほいけない この硬い時代にあっても。 
硬すぎる人々は折れ、 鋭すぎる人々ほ刺さって そしてすぐ折れてしまう。 

Du, laß dich nicht verbittern in dieser bitt’ren Zeit. 
Die Herrschenden erzittern – sitzt du erst hinter Gittern – doch nicht vor deinem Leid. 
苦くなってはいけない この苦い時代にあっても。 
支配者たちは ー君が鉄格子の背後に坐るとしてもー 君の苦しみにひるむことはない。 

Du, laß dich nicht erschrecken in dieser Schreckenszeit. 
Das woll’n sie doch bezwecken daß wir die Waffen strecken schon vor dem großen Streit. 
恐れてはいけない この恐れの時代にあっても。
彼等の狙いは 我々が武器を捨てることだ、 大きな戦いが始まる前に。 

Du, laß dich nicht verbrauchen, gebrauche deine Zeit. 
Du kannst nicht untertauchen, du brauchst uns und wir brauchen grad deine Heiterkeit. 
君の時間を使いたまえ 自分をむなしく使い古さずに。 
君は地下に潜ることほできない。 君にほ我々が必要だ、 そして我々が必要としているもの、 それは君の朗らかさだからだ。 

Wir woll’n es nicht verschweigen in dieser Schweigezeit. 
Das Grün bricht aus den Zweigen, wir woll’n das allen zeigen, dann wissen sie Bescheid. 
口をつぐむことをやめよう この沈黙の時代にあっても。
みどりほ枝から萌え出している。 そのことをみんなに知らせよう、 そうすればみんなはきっとわかってくれるだろう。 

(日本語訳:一橋大学助教授 諏訪功)

いかがだったでしょうか。韻を感じられましたでしょうか。あるいは、「全然あいみょん関係ないじゃん!」と思ったでしょうか。 

この歌「Ermutigung」は自分と同じく、 東ドイツにありながら東ドイツに容れられない抒情詩人フーヘルへ向けて書かれたものです。 

不遇の時代における身の処し方と、 未来への希望を歌ったビーアマンの詩は、困難な立場にある人々に、時代を超えて、わずかながらでも安堵を与えるものであると考えます。 

ちなみに、ヴォルフ・ビーアマンの歌は現在spotify等でも配信されていますので、もし気に入ったよ~という方はそちらもぜひチェックしてみてください。 

私の発表は以上です。 


昔の自分、教授の前でこれを長々と読んでいたの怖すぎる。

こんなのに単位をくれた優しい教授に心から感謝。卒論も引き続きよろしくお願いします……。

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