第2話もめちゃくちゃ最高だったので、また感想を書きます。
第1話の感想
→麻布競馬場『この部屋から東京タワーは永遠に見えない』が刺さりすぎておれは、おれは……1話目「3年4組のみんなへ」だけで感想を書いてしまうほどに
第2話「30歳まで独身だったら結婚しよ」感想
前半パート
まずは冒頭のいいな~と思った比喩表現。
「(略)彼が言ったその言葉は、”勢いで入れたタトゥー“みたいに、恥ずかしいことに今でも私の心にへばりついています」
良いレトリック~。幼さと不可逆性の両方をあますことなく象徴している。勢いで入れたタトゥーがそういうものであるという共通認識を的確に突いてくる。
次に「私」のプロフィール。
“父は東大、中学から女子学院、第一志望の東大は4点足りずに落ち、慶應の法学部へ“
この設定、さすがに大学の友人と似すぎてて読めない。もう僕の頭の中に特定の人間が出てきてしまっている。恐ろしいリアリティ。どうかその彼女がこの記事を読みませんように。
このあとも読むのがつらい描写が続く。
大学生特有のノリ……いかにもな陰キャ仕草……ダサい、あまりにもダサすぎる。
今度は、自分と似すぎてて読めない。苦しすぎて、もうすでに何回も紙から目を離している。僕が全部悪いんです。殺してください。
Twitter大学生の解像度があまりにも高すぎて、もしかしたら気づかないうちに僕は密着取材を受けていて、この物語のモチーフになっていたのかもしれないとすら思い始めてきた。
「私」含む大学生たちの姿があまりにもリアル僕(ら)の大学1年生のときの姿と重なって、全編見ていられない。
それと同時に、ここまでの生々しさは”本物”にしか出せないので、おそらく筆者もこんな大学生活を送っていたのではないだろうか。なあ、そう言ってくれよ。せめて。
このあたりで前半が終わる。この時点でもう虫の息。というか正直、ここを読んでいるときがきつさのピークだった。
後半パート
後半はレトリックや細かい描写がまたさらにピカピカに光っていた。
「二子玉マダムのジェネリック品みたいな何人ものお母さん」とか「大量製造されるキャンベル缶みたいな幸せ」みたいな、皮肉を交えたレトリックがたくさんあって、そういうのが大好きな僕は読みながら終始ニコニコしていた。
結末としては、ダサかった「彼」は幸せになって、「私」には空っぽが残った。それだけの話。
救われなさ、カタルシスのような読後感がたまらなくよかった。ゆるやかな悲劇。
読み終わったあとに、この物語がとても面白く読めたということは、今の僕はわりと幸せなのかもしれないな~なんて考えた。悲劇は幸せ者しか楽しめない。
あるいは斜めから読むなら、あまりにも「彼」が「僕」自身だったので、「彼」が幸せになってくれたことで「僕」自身の「ダサさ」もちょっと救われた、と読むこともできるかもしれない。
こうやってブログを書いていることも、いろんな人から「ダサい」と思われているんだろうな~
いずれは自分の中でも「ダサい」黒歴史になっていくんだろうな~
そういう想いが、ちょっとだけ救われた気がした。
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