歌って、笑って、ちょっと考える。――映画『天使にラブ・ソングを…』感想

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この映画、おもしろすぎる~~~!!!
聖歌!! 手拍子!! グルーブ感!!!

……すみません、開幕から取り乱してしまいました。

でもこの映画、単におもしろいだけの物語じゃないんです。
人間らしさ」が目一杯に詰め込まれた「自己効力感」の物語。
映画『天使にラブ・ソングを・・・』を紹介させてください。

〈あらすじ〉
ウーピー・ゴールドバーグが演じるのは破天荒なクラブ歌手。ギャングから逃れるため身を隠したのは…なんと修道院だった。だが彼女の力で生まれ変わった聖歌隊が大絶賛を受けると彼女の存在が世間に知れ渡り、居場所がギャングにバレてしまう。


ずーっとコメディ
全編100分間通してずっとふざけ倒してて最高

コール(啓示)」と「コール(電話)」を間違えたり、シスター姿に対して「ペンギンみたい!」と形容したり、クスっとくる細かいネタが絶え間なく入っているのでニコニコが止まらない。

また途中で敵役も出てくるんだけど、敵役との闘いもめちゃくちゃコメディに振ってるので安心して観ていられる。


主人公デロリスと修道院長の関係性
主人公デロリス元クラブ歌手修道院長規律に厳しいシスター

主人公の素行や口が悪いのはもちろんだが、修道院長が結構毒舌なのが相当良い。
シスターだって人間だもんな……。修道院長側の苦しみも真っ当。

そのうえでお互い文句はあれど相手の立場に理解があり、ちゃんと”社会“をしているのが偉い。
おもしろコメディなのに両者ともに人間ができているので観ていられる。


シスター・メアリー・ロバートの悩み
修道院で出会う若いシスターこと、メアリー・ロバートが最高。修道院生活に馴染めない主人公デロリスに対して心優しく接してくれる。

そんなメアリー・ロバートだが主人公に「私じゃなければできないことをしたい」という密かな想いを打ち明ける……。

……心優しくて、内向的で、引っ込み思案で、おどおどしてて、劣等感に悩んでいて、でもそんな自分から変わりたいと思っている…………?

え? ヲタク(主にヲレ)の好きな要素てんこ盛りじゃん。
こんなの好きになっちゃうよ~~~~!!!!

好きになっちゃうよ~~~!!!(伊落マリー・ブルーアーカイブ)

聖歌隊の立て直し
はじめはダメダメだった聖歌隊を、主人公が立て直すということになるのだが……。

なにはともあれ、最初の聖歌隊の歌が露骨にカスすぎてうける
みんなめちゃくちゃがんばって下手に歌っていて、むしろ上手いまである。
この映画、余すことなくふざけ倒してくるな……。

そして主人公の指導後は……

すご〜い!! 聖歌とっても上手!!! きれい!!!
え、手拍子始まったんだけど!!!
すごい!! 編曲アレンジまでしてる!! おもしろすぎる!!!!
クソおもろ映画やんけ!!!!!

マジでこれになる。
いつも本ばかり読んでいるので映画は観ないけれど、ここのパートは映画じゃないと味わえない面白さだと思った。


理想と現実のグラデーション
劇場やカジノは面白いから人が集まるなら、修道院も面白くすればよいのでは? と考える主人公と、修道院として俗世に寄りすぎるべきではないと考える院長。前者は資本主義的には正しく、後者は信仰として理解できる。どちらも間違いではない。

なんかこういうのって、あるよね~~~~~!

唐突な「ままならないね」があなたを襲う(篠澤広・学園アイドルマスター)

これを「正しい資本主義との付き合い方」と取ることもできるけど、個人的には「理想と現実のグラデーション」を説いていると取りたい。シスターは純白でいられるかもしれないけど、一般市民はせいぜい薄いグレーが限界だから、純白だけを白とするのではなく、ちょっと濁った白色や薄いグレーも認めたほうが結果的に信仰が広まるんじゃないかという。白って200種類あんねん


テーマ:「変化」の物語?
主人公デロリスはシスターへと「変化」した。
修道院長は新しい信仰へと「変化」した。
メアリー・ロバートは新たな自分へと「変化」した。

では、映画『天使にラブ・ソングを…』は「変化」の物語なのだろうか……?


テーマ:「自己効力感」の物語
私は「自己効力感」の物語だと解釈した。

主人公デロリス修道院に来たことで自己効力感を失った
そして聖歌隊の指導によって自己効力感を取り戻した

修道院長自身の考えが通用しなくなったことで自己効力感を失った
そして主人公デロリスの救出によって自己効力感を取り戻した

メアリーロバート主人公デロリスの来訪によって自己効力感を欲した
そして聖歌隊での歌唱によって自己効力感を獲得した

彼女らの「変化」、その根底にはすべて「自己効力感」が関係している。


彼女たちは犯人を捕まえた警察でもなければスーパーヒーローでもない。
しかし、みなが最終的に「自己効力感」を獲得して、自分の居場所をみつけることができた

もしも今あなたがメアリー・ロバートと同じように「私じゃなければできないことをしたい」という悩みを抱えているのなら、ぜひ一度この映画を観て羽を伸ばしてみてはいかがだろうか。

ペンギンみたいに、ね


【リンク】
『天使にラブ・ソングを…』(字幕版)

【Special Thanks】
僕に本映画をオススメしてくれた信頼の置ける友人。ありがとう。めちゃくちゃ面白かった。

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