なぜお金だけでは幸せになれないのか?「狼」と「香辛料」に隠された象徴性とは。アニメ『狼と香辛料』感想

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なぜお金だけでは幸せになれないのか?

このアニメを観れば、その答えがわかります。
アニメ『狼と香辛料』がとにかく面白かったので紹介させてください。

あらすじ
若き行商人クラフト・ロレンスは、荷馬車を引く一頭の馬を相棒に、街から街へと商品を売り歩く日々を送っていた。ある日、黄金色の麦畑が広がる小さな村を訪れた彼は、耳と尻尾を有する美しい少女と出会う。
「わっちの名前はホロ
自身を “賢狼” と呼ぶホロは、豊穣を司る狼の化身だった――。

①賢狼ホロの二面性―” つよさ “と” よわさ “

” つよさ “
このアニメを観始めたときは、ホロがただかわいいだけの少女キャラなのかと思っていた。
しかし実際は、ホロが自身のことを「賢狼」と呼ぶように、地頭の良さが光る賢さを持っている。

それに加えて、男を手のひらの上で転がすあざとさ、極めて”いい性格”をしている点も見逃せない。具体的には、ホロのおねだりが毎回ずるくてかわいい。完璧なファム・ファタール性

そしてさらに、ホロは”獣”に変身できる。なんと物理的な強さまで兼ね備えている。でっかい。もふもふ。それもまたかわいい~。

賢さあざとさ強さ、すべてを兼ね備えた最高つよつよお姉さん、それが賢狼ホロ。

” よわさ “
こんなにつよつよなホロだが、完璧な存在というわけではない。主にメンタル面
端的に言って、メンヘラの素質がある。特有の感情的機微に、たまに胸がキュッってなる。

この” つよさ “” よわさ “のギャップこそがホロの魅力だ。

我々は、彼女が時折見せるよわさに翻弄され、狂わされるほかない。
誰が観ても確実にホロに骨抜きにされてしまう。

②「金融」×「ファンタジー」

テーマが「金融」なのも面白い。

為替取引」や「硬貨における銀の含有量の違いで儲ける」ことがテーマになっている回もああれば、「信用買い」で危険な目に遭う回もある。

多少金融に興味がある人にとってはめちゃくちゃ面白く、金融知識がまったくない人にはわかりやすく教えてくれる。理想の金融教育

板チャート(人力)

最終的には理論としての「需要と供給の関係性」にとどまらず、「相場のヒリつき感」「相場との適切な向き合い方」など、メンタル面の心得まで教えてくれる。はやく義務教育に取り入れたほうがいい。

③巧妙な構成

本作は、極めて巧妙な構成によって形作られている。まるでミステリのごとく、無駄な描写が一切ない。きちんと伏線回収をしてくれるからしっかり見る甲斐がある。

全話通して面白いが、特にオススメなのは第19話。
商人お金で買えない愛を語る。めちゃくちゃ熱いから2クールあるけど最後まで観てください。

最後に―タイトル回収について

本作は間違いなく神アニメである。かわいいとかっこいい、ユーモアとシリアス、金融とファンタジー、すべてのバランスが心地よい。

また、『狼と香辛料』というタイトルについては「香辛料」が行商人のロレンス、「」が賢狼ホロを表していると解釈することができる。おそらくこれが一般的な読み方だ。

しかし、この物語をロレンス目線で考えたとき、タイトル回収とは異なった解釈ができると考えた。

行商人のロレンスにとって「香辛料」とはロレンス自身ではなく「お金」そのものの象徴だ。
そしてその「香辛料」と対比される「」が「お金では買えない大切なものの=ホロ」として描かれているのだと私は解釈した。

冒頭の問い、「なぜお金だけでは幸せになれないのか?」の答えはここにある。
ロレンスにとって、香辛料とは無ければ生きていけないものだ。
しかし、いくら香辛料があっても、狼がいなければ幸せになることはできなかった。

狼と香辛料』とは「お金の大切さ」と「お金では買えないものの大切さ」を描いた極めて重厚な作品なのだ。

【リンク】
TVアニメ『狼と香辛料』:公式サイト
Twitter:(@Spicy_Wolf_Prj

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